パピーズママ

イタリアングレーハウンド(イタグレ)専門ブリーダー パピーズ・ママ

里親里子、保護犬を考える

ペットショップやブリーダーから子犬を購入せずに、保健所や動物愛護センター、ボランティア団体より保護した犬をもらい飼育した方が良いことだという風潮があります。
たしかに立派な行為だと思いますし、動物愛護推進員を委託されている私としてもありがたく感謝しています。
素晴らしい考え方だと思いますが、欠陥や欠点は無いのでしょうか。

まずは、保護犬の譲渡を受ける際には高いハードルがあります。
飼育の勉強や環境調査、一緒に生活できるかのトライアルも含め数回の訪問をしなくてはいけません。
飼育者の年齢(60歳以上はNGとか)、年収の報告義務がある団体もあります。
根掘り葉掘り個人の情報を聞き取りされ、自宅まで上がりこまれ家庭環境を調べられることもあります。
独身者には譲渡しないとか、男性では拒否する、マンション・アパートは認められず戸建て住宅のみとなるところもあります。

運営管理費として10万円程度の寄付金を義務としている愛護団体も知っています。
それに感染症予防ワクチン接種、狂犬病予防ワクチン接種、マイクロチップ挿入登録費、去勢避妊手術代、成犬の譲渡を受けるのでしたら獣医師による健康診断も必須、これらを合わせると更に追加で5万円程度にはなってしまいましょうか。

不幸に育った犬たちを大切に育ててもらうため、飼い主さんとの別れを二度と無くすために仕方ない処置なのかもしれませんが私には少し厳しすぎるように感じてしまいます。
個人情報や年収などを見ず知らずの方に伝えるには躊躇します。
性別や年齢によって飼育拒否されるなんて今時何のハラスメントでしょうか。
団体運営には費用が掛かることは分かりますがあまりに高額ですと保護の意義自体が分からなくなります。

更に注意しなければいけないところがあります。
譲渡を受ける犬にはどのような血統が入っているでしょうか。
MIX犬だから分からないなどと言ってはいけません。
MIX犬にも必ずなにがしかの先祖がいます。
保護犬を飼育するならば看取るまで一緒に生活をするつもりでお考えだと思います。
セントバーナードや秋田犬の血統が入っていたら?
50~90kgの体重まで育ってしまうかもしれません。
その子が病気になったら抱っこをして動物病院へ通えますか。
は1メートルを超えてしまうかもしれません。
お宅のマンションの規約では飼育可能ですか。
犬が大きくなったからと言って引っ越しができますか。
ビーグルや猟犬の血統が入っていたら?
遠方まで通る大きな声で吠えますがご近所の迷惑になりませんか。
土佐犬やマスチフ、闘犬の血統が入っていたら?
この子たちに襲われたらプロである私たちですら立ち向かえません。
小さいお子様や高齢者に襲い掛かったら一生残る傷を負ったり、噛傷事故により死んでしまうことすら珍しくありません。
小型犬と言ってもプードルや長毛種だったら毎月数千円(年間10万円ほど)のトリーミング代がかかってしまいます。
日本犬の血統でしたら他人にはフレンドリーな性格ではない犬が多く、チワワやダックスフンドなど無駄吠えが続いてしまう血統を持つ犬種もおります。
成犬の譲渡を受けるのでしたら虐待やネグレストを受け人間に恐怖し怯え攻撃的になってしまう子も少なくありません。

血統書を持つ純血種は成長してもほとんどが同じくらいの体長や体重にしかなりません。
小型犬種ならどんなに間違えても10kgを超えることなどありません。
性格もおおよそ似ています。

何世紀に渡り血統を固めてきた愛玩犬は人間の生活環境内で人と一緒に暮らしていけるように、それに適した子ばかりを繋いでまいりました。
突然変異でとんでもなく大きくなるとか凶暴性が現れることなどありません。
それが血統です。
ブリーダーが何代もかけて守り築き上げてきた血統なのです。
たとえばイタリアングレーハウンド(イタグレ)。
突然長毛になることもなく、10数kgを超えることもありません。
無駄吠えが続いて困るとか攻撃的になってしまい怖いなどという話を聞いたことはありません。
それでも更に犬種の持つメリットを高めようと勉強を続け、努力を怠らない者がブリーダーです。
生体代が高額でしょうが、それに見合う環境を整備し、グレードの高い雄雌の犬を探し、未来に続くハイレベルの子犬を作出しようとします。

ブリーダーでもあり、動物愛護推進員でもある私ですから言えることがあります。
ほとんどの犬には15~20年近くの寿命があります。
現在の犬は野生では生きていけません。
人間が守り、フォローし、可愛がってあげないと死に絶えてしまいます。
保護犬の譲渡を受けることも素晴らしいでしょう。
純血種の犬を購入することも良いことと思います。
いずれにせよ育てると決めたからには、どこから迎えるか深く考えて一般の風潮よりは自身の状況や環境を見て判断していただくようお願いします。